強風が生んだ澎湖(ポンフー)の台湾語
こんにちは、台湾の離島「澎湖(ポンフー)」に移住した日本人のダイチです。
皆さんは台湾で話されている言葉をご存知ですか? ベトナムはベトナム語だし、タイはタイ語だし、台湾は「台湾語」っていうのがあるんじゃないの? と思っている方もいるのではないでしょうか。
台湾では3つ以上の言語が話されてる
確かに台湾には台湾語という言葉もありますが、標準語は中国語(北京語)です。
一口に中国語と言ってもいろいろ有りますが、メジャーなのは主に北京で使われている「北京語」と、香港で話されている「広東語」の2つです。
いわゆる『中国語』は北京語を指すことが多く、台湾でもこの北京語が標準語として採用されています。
ですが実際には、台湾では「北京語」「台湾語」「(それぞれの)原住民語」が日常会話で使われています。
これらの言語は日本語で言う『方言』レベルの違いではなく、ほとんど別の言語と言えるくらい異なる言葉です。
台北には北京語しか話せない人も多くいらっしゃいますが、逆に田舎に行くとこの3言語もしくはそれ以上の言語を使い分けられる人がたくさんいらっしゃいます。
生まれながらにしてほぼバイリンガルかトリリンガルだなんて、すごいと思いませんか?
ちなみに台湾にいる人のほとんどは元々中国の福建省から渡ってきた人々で、福建省の言葉が台湾語になりました。なので福建省の言葉と台湾語はとても似ているそうです。
その他に台湾にはたくさんの先住民(台湾では誇りを持って「原住民」と呼びます)がおり、彼らは独自の言葉を使っています。
なんでこんなに言葉が多いの?
なぜこんなに言語が多いのかというと、日本時代には日本語を話すことを強制させられ、終戦後は国民党政権になったので国民党がやってきた大陸の言葉である北京語を話すことを強制させられたという複雑な歴史があるからです。
それまでは台湾語か原住民語もしくは日本語でしゃべっていたのに、ある日を境に使うことを禁じられるということがたった1世紀の間に二度もあったわけですから、当時は大変な混乱だったと思います。
澎湖には原住民はいないので現在は、日本語・台湾語・北京語が日常会話で使われています。
もちろん、日本語を話せるのは日本時代に生まれた80歳以上の方で、いまも日本語を覚えている方だけですので、普段はまったく聞く機会はありませんが、たまに日本語世代の方にお会いすると大変流暢にお話しをしてくださいます。
標準語は北京語なので日常生活では北京語が用いられますが、生粋の澎湖人同士で使われるのはもっぱら台湾語です。そしてこの澎湖の台湾語はとってもクセがあり、台湾の台湾語とも微妙に発音が違うんです。
澎湖弁の特徴
そんな澎湖の台湾語(澎湖弁としましょう)について先日、澎湖人の友人におもしろい話を聞きました。
澎湖弁では「i」の発音が「u」に置き換わるという特性があります。
例えば「あなた」の台湾語は「リー」ですが澎湖弁では「ルー」となり、魚は「ヒー」が「フー」になるのですが、これは『強い風の中でもハッキリと聞き取れるようにするため』なんだそうです。
確かに、「i」よりも「u」の方が強く太く発音できますよね。
そういえば、日本の東北地方では寒くて口が動きにくいから短い言葉になる(山形の友人によると「んだ」の一言でほとんどの意味が伝わるらしい)し、オーストラリアの砂漠地帯ではコバエが口に入らないように口をあまり開けない発音になっていると聞いたことがあります。
それから極寒の地で暮らすエスキモーにとっては雪が大切なものなので「雪」を表す言葉が100個くらいあるそうです。言葉って、その地域の環境に影響されるんですよね。
そういえば日本語って回りくどいですけど、日本人の性格も回りくどいですよね。
澎湖の台湾語も澎湖の環境を表しているのでしょう。台湾語には北京語よりも2つトーンが多く6つのトーンを使い分けられなければならない上に、文字がないので学習するのは難しそうです。
ですが幸い、今は小学校1年生の時から台湾語の授業があので、小学生向けの教科書を読むのも一つの方法かもしれません。