澎湖(ポンフー)に自生する野草を発見! 本当に食えるのか? お料理実験してみた!
アイスプラントという植物をご存知でしょうか? 海水と同じくらいの濃度の塩水のなかでも育てることができるほど、塩に対して抵抗力がある野菜です。
やや肉厚の葉っぱの裏側には塩でできたツブツブがあり、パリパリとした食感があり、味付けをしなくてもしょっぱい味がするのが特徴です。
日本では塩味のする新野菜として「ソルトリーフ」「プッチーナ」「シオーナ」として販売されており、比較的新しい野菜です。
そんなアイスプラント、近年はここ澎湖(ポンフー)でも栽培がされるようになり、冬から春にかけてはこの見慣れない野菜が市場の軒先にならびます。
さて、澎湖の「西嶼(シーユー)」という島から橋でつながった「小門(シャオメン)」では、2018年6月頃から10月にかけて澎湖に継承されている伝統的な畑「菜宅(ツァイザイ)」の復旧作業が行われています。
いくつかある菜宅のなかの1つをぼくが担当することになって作付け計画を立てていたところ…、となりの畑を担当するパーマカルチャーの先生がおもしろい野草を見つけたと聞きました。
それがこれ。
「番杏」という山菜で、食用になるのだと言うのです。恐る恐る生の状態で食べてみると、パリパリとした食感があり、塩っぽい味がします。あれ、これってもしかしてアイスプラントの一種?
この野草、個人的にもずっと「食べられそうだな」と思っていたものなのですが、まさか本当に食べられるものだったとは!
しかもこれ、澎湖のいたるところに生息しているのです。かの先生曰く、元々そこに生えている植物を植えれば間違いはないということで、彼はこの野草を畑に植えるつもりのようです。
な、なるほど! たしかに在地の野草で食べられるものがあればそれを植えれば成功間違いなし。しかもこの菜宅は冬の季節風で海水が雨のように降り注ぐ地帯なので、生命力の高い野草を植えるのは合理的です。
ただしこの番杏には一つ大きな問題が。食べ始めは確かに美味しいのですが、後味がすごく、エグいんです。苦味と辛味があって、間違いなく「アクがあります」。食用にするにはこのアクをどう処理するかがポイントになりそうです。
その後、自宅の畑の近くでもこの番杏を偶然発見したので、両手でひとすくいほど収穫して調理をすることにしました。前置きが長くなりましたが、今回はこの野草「番杏」を美味しく食べるための方法をご紹介します。
サラダにして食べる
まず最初にもう一度生の状態で食べてみます。
うん、食感は良いのですがエグみがやばいです。
喉の奥が辛くなって、もし食用だと知らなかったら間違いなく毒草だと判断する味です。
ということで、そのままサラダとして食べるのは難しそうです。
炒めて食べる
ここは台湾なので台湾風にごま油で炒めてみましょう。もしかしたらすごく美味しいかもしれません。いい感じに火が通ったら出来上がりです。
うん、そうですね、ゴマの香りが豊かでいいのですが、エグみは全然抜けていません。
ちょこっと火を通すくらいではだめなようです。
茹でて食べる
野菜はなんでも茹でれば美味しくなるものです。そこで今度は茹でてみました。
さすがに茹でると鮮やかに色になって美味しそうです。
うん、んん!? これはなかなかイケる??? さすがに茹でることによってエグみが少しだけ抜けました。
でもまだ喉の奥がヒリヒリする感じが少しだけあります。
酢味噌和えにして食べる
こんな時は酢の力でエグみを押さえ込みましょう。酢味噌和えは日本料理が誇る万能の和えダレです。
お、おお! けっこう美味しいぞ!
番杏の食感と酢味噌の風味が合わさって、もうこれは料亭で出されても誰も疑問に思わないのでは? という味がします。
が…、やっぱりしばらく経つとエグみが喉を突き刺してきました。
ですが生の時と比べるとだいぶ弱くなっているので、ギリギリ食用にできるような感じにはなっています。
重曹でアク抜きする
分かりました。もう分かりましたよ。これは一般的な山菜と同じようにアク抜きをしっかりする必要があるということです。
そこでワラビと同じアク抜き方法を試すことにしました。ワラビのアクが抜けるくらいなのですから、きっと番杏のアクは問題なく消えることでしょう。
まずはお湯をわかりて、そこに微量の重曹を入れます。そして粗熱をとってから番杏を浸しました。これで半日くらい待てばアクはすっかり抜けているはずです。
そして半日後の様子がこちら。
すっげー、真っ黒になってます。これはもう、アクが抜けて美味しい部分しか残っていないに違いありません! ということで早速食べてみましょう。
うん、うん、んん?!? な、なんと、まだ微妙にアクが残っているではありませんか!
重曹まで使って半日もアク抜きをしたのに茹でた時のアクがほんの少し穏やかになったくらいにしかなっていません。
もしかしたらこれを茹でればアクがすっかり抜けるかもしれませんが…。
ここでギブアップ
すでにお気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、実はこの「番杏」、日本では「ツルナ」と呼ばれている山菜です。かなり広いエリアで自生しており、ニュージーランドでは「ニュージーランドホウレンソウ」なんて呼ばれているのだとか。
クックパッドなどを見ると、わざわざアク抜きをしている人なんかいません。おそらく澎湖のものは野生化して極端にアク(シュウ酸が原因でした)の強い品種になってしまったのでしょう。
また、ツルナを調べた結果、澎湖で一般的に栽培されているアイスプラントと同じ「ハマミズナ科」の植物であることが分かりました。
ということは、ツルナが育つ環境であればアイスプラントも育つ可能性が高いということです。っていうか、すでに澎湖ではアイスプラント栽培が盛んです。
アイスプラントを栽培することにします
ちなみに、澎湖は小さい島ながらも「澎湖ヘチマ」「烏崁キャベツ」「白膜花生」「風茹茶」など独特の作物が多いです。冬の季節風が強いのに加え、塩害が激しい地域ではありますが、逆にそのような環境だからこと美味しく育つ作物が多いのも事実。
澎湖での野菜栽培はまだまだ本格化されておりませんが、一方で最近は家庭菜園や田舎への移住に関心が多い人がいるのは台湾も同様です。
日本の地域おこし協力隊のようなシステムを作って、空き家と菜宅(もちろん普通の畑でもOK)を提供すれば、大きく化ける潜在能力があると思いますよ!
…という提案を小門の友人にしてみたら興味を持ってくれたみたいです。台湾で日本の首相に相当する賴清德さんも日本の地方創生に関心を寄せているようです!
賴揆召開年終記者會 勾勒「安居樂業」、「生生不息」及「均衡台灣」施政願景
10月まで小門で打工換宿(住み込みボランティア)を募集しています
2018年10月までの期間、澎湖の小門に住み込みで農業ボランティアをされたいという方がいらっしゃいましたら、ご連絡ください。
農業ボランティアをしていただく代わりに、宿と食べ物を無償で提供いたします。
作業内容は、小門の菜宅での土作りや苗作り、植え付け、水やりなど、農業全般に関わることです。
中国語ができなくても構いませんが、ぼく自身が受け入れをするわけではないので、小門には時々しか行きません。なのでぼくのことはあまり頼りにしないでくださいね。
でも作業内容の指示などはぼくがしますのでご安心ください。
作業がない時間帯は澎湖の観光が可能です。レンタルバイクなどは有料ですが、手配はこちらでいたします。