澎湖の奇跡の瞬間!干潮時に現れるトンボロ道「モーセの道」を体験しよう!

「トンボロ」を知っていますか?

トンボロとは、潮が引いた時に海底が露出し、道や橋のように見える自然現象のことです。

このような地形は日本にもいくつかあり、特に香川県の小さな島「小豆島」で見られるトンボロ現象は「エンジェルロード」というロマンチックな名前まで付けられて有名な縁結びスポットになっています。

私が行った時は一人旅、それも潮の時間が分からずに行ったので膝まで濡れて500メートルの海を歩きましたが…。

それはともかく、普段は海の底に沈んている道が干潮の時、つまり1日に2回だけ現れるだなんて面白いと思いませんか?

澎湖(ポンフー)にもそんなトンボロを見られる場所があります。それが湖西郷にある「奎壁山遊憩區(kuí bì shān yóu qì qū|クイビイシャン)」です。

台湾では、旧約聖書の出エジプト記にちなみ、「摩西分海(モーセの海割り)」と呼ばれています。

これが、奇跡の瞬間だ!

澎湖の奇跡の瞬間!干潮時に現れるトンボロ道「モーセの道」を体験しよう!

道が現れるまでの時間は、平均すると30分ほどです。

ただし、潮の満ち引きの時間は毎日異なり、季節や天候によっても変わるため、摩西分海に訪れる際は事前に道が現れる時間を確認しておきましょう。

道が完全に現れると、その上を歩いて向かい側にある島「赤嶼」まで行けます。

2017年からは自然保護区となったため赤嶼に上陸することはできませんが、途中まで歩くだけでも十分楽しめます。

道が現れる奇跡の瞬間を知る方法

トンボロは自然現象なので、道が現れ始める直前の時間は、現地住民にも正確にはわかりません。

ですが、道が現れている大まかな時間を観光庁が公開していますので、それが参考になります。

潮汐表 – 澎湖國家風景區

リンク先に月ごとの潮汐表を見られるメニューがあるので、訪問予定の月を選択しましょう。

ちなみに台湾では西暦ではなく「民國」で年を表します。

西暦を民國年に変換するには、西暦の年数から1911を引きます。例えば、2023年の民國年は2023-1911=112年となります。

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なので、2023年4月の潮汐表を見たい場合は、「112年4月」と書かれているものを選択してください。

すると、潮汐表が表示されます。表中の「參考安全通行時段」が、トンボロが出現して歩くことができる時間帯です。

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この時間の30分ほど前に行けば、道が現れる瞬間を見られる確率が高くなります。

ただし、天候が悪い時はトンボロが現れても、立ち入り禁止になることもあります。

海の向こうにある島「赤嶼」まで歩いてみよう!

奎壁山遊憩區に行くと、海の向こうにある島「赤嶼(ツーユゥ)」にすぐに気づくことでしょう。

この赤嶼までの間は満潮時には海水によって陸地と赤嶼が分けられていますが、ひとたび潮が引き始めるとS字型の道が浮かび上がります。

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S字型のきれいなトンボロを取れるのは観光客がいっせいにトンボロに降りる直前の数分間だけ。シャッターチャンスを逃さないで!
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トンボロの上にはゲンコツくらいの大きさの玄武岩の石がたくさん。歩きにくく、濡れている石は滑りやすいので気をつけて。

普段は危険なため赤嶼につながる海岸には下りられませんが、潮が引いた時には柵が開いてトンボロの上を歩けます。

トンボロの上を歩ける場合は、黄色か緑色の旗が掲げられます。一方、赤い旗の場合は立ち入り禁止ということなので、ご注意ください。

観光シーズンには、モーセの道に係員がいます。必ず係員の指示にしたがってください。

距離は約300メートルあり、この時に注目して欲しいのが足元の道です。澎湖はそのほとんどが玄武岩で構成されているため、当然この道も玄武岩でできています。

何気なく歩いていると気づきませんが、じっくりと見ると細かいでこぼこになった地形や、まん丸の岩、細長く伸びた岩脈など、今から1千万年前に作られたと考えられる貴重な地形がたくさんあります。

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「壺穴」と呼ばれるでこぼこの地形
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角ばっていた玄武岩が風で削られて丸くなったもの
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球状に風化し海で侵食された玄武岩
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帯状に隆起した玄武岩

さらに、赤嶼に向かって左側には世界最古の漁具と言われる「石滬(スーフー)」を見ることもできます。

石滬とは、石を積み上げて作られたワナの一種で、潮が満ちた時に魚を追い込み、潮が引いた時に捕まえる漁法に使われています。

潮の干満が大きい場所ほど作りやすく、澎湖はその条件に合っているので世界で最も石滬が多く現存しています。

昔の人は潮の干満が大きいことに注目して、奎壁山に石滬を作ったんですね。

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奥に見える石垣が「石滬(スーフー)」の一部だ

独特の地形を楽しみながら歩くとやがて赤嶼に辿り着きます。

赤嶼にはきちんとした道はありませんが、山の上まで登ることができます。山の上からは見晴らしが良く、また直径20メートルの大きさの火口跡もあります。(2017年夏より自然保護区に指定されたため、現在は上陸できません。)

その名の通り赤嶼には赤い岩がたくさんあり、それらは鉄分を含んだ岩が酸化したために見られるものです。

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ちなみに、奎壁山(クイビイシャン))はもともと「亀壁山(グイビイシャン)」と呼ばれていました。その由来は海から見た時に大きな亀が寝ころがっている様子に見えたからだそうです。

ちょうど赤嶼から帰る時には奎壁山を海から眺める格好になるので、亀に見えるかどうか確かめてはいかが?

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北寮遊憩區のお手洗いはアーティスティック

また、奎壁山遊憩區にある「北寮奎壁山地質公園」は2015年11月1日に静岡県西伊豆町にある「堂ヶ島公園」と友好公園になりました。

堂ヶ島に行ったことのある方には奎壁山と赤嶼にも親近感がわくのではないでしょうか。

なお、奎壁山遊憩區には駐車場のほか、お手洗いとビジターセンターも完備されています。